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パワープレイス紀行

木の端材で育つ感性

きっずクラブ潮見
東京都江東区

&

栃木ダボ製作所
栃木県鹿沼市

パワープレイス紀行Vol.3では、2010年までパワープレイスの親会社である内田洋行のビルがあった江東区潮見での活動をお届けします。
当時の内田洋行デザインチーム(現在はパワープレイスと内田洋行に在籍)が、会社から徒歩3分のところにある学童保育所『きっずクラブ潮見』といろいろな活動を始めたのは2008年でした。
きっかけは「最近の子ども達にとって身近にいる大人は、親か、学校の先生か、塾の先生しかいないんです。」というきっずクラブ潮見の園長先生の言葉に、当時のデザインチームの親分が危機感を覚えたことでした。

「俺が子どもの頃は地域みんなで育ててくれた!わけのわからない飲んだくれにパシリに使われてお駄賃もらったり、いたずらをしたらゲンコツもされた!家に帰ったらなぜかとなりのおばちゃんが勝手に上がり込んで煎餅を食べてたこともあった!!訳のわからない大人がたくさんいた!しかしみんな愛があった!!今の子どもたちに、俺たちがわけのわからない大人として接することが大事なんじゃ無いか?」親分はそう言ってデザインチームを率いて活動を始めました。

まだ若手だった私たちはこどもの扱いがわからずオドオド。しかしこどもたちはそんなの関係ありません。全力で私たちと遊ぼうとしていたし、全力で向かってきてくれました。そんな子供達が夢中で取り組んでくれたのが木の端材を使った工作でした。

木で模型を作ることが多かったデザインチーム。その端材を持っていって、工作をしてもらいました。
工作展には毎回テーマを出します。
2007年(第一回)の『ゆめのおうち』にはじまり、2008年(第二回)『ゆめのまち』、スカイツリーなるものができるとニュースでやっていた2009年(第三回)には『ゆめはっしんタワー』 その他にも『ゆめはつづくよどこまでも(電車)』『ゆめのおんがくたい』『この木なんの木ゆめなる木』『オバケゆめやしき』などさまざまなテーマで作ってもらいました。今年で17年間のお付き合いになりますが、コロナの時期をのぞいた16回工作展を開催しました。
私たちがやることは子どもたちの制作補助。ボンドの使い方から構造まで子どもたちがつくりたいものをなるべく忠実に再現するためにお手伝いしています。中には、角材を点接着で斜めに立たせたいなんて要望もあり、みんなで試行錯誤したこともありました。すぐ終わる子。中々手が進まない子。仲良しと同じものを作っちゃう子。一人一個だと言っても4人で超大物をつくっちゃう子たち。いろんな子がいましたが最終的には想像を超える作品が並び、驚かされました。本当に思い切りが良く、見ていてこちらもワクワクしてしまう作品が勢揃いしました。

そんなある年、会社の方針でデザインチームの半分が内田洋行からパワープレイスへ出向となりました。模型をつくることもほぼなくなり、端材を確保するのがむずかしくなりました。工作展を続けていくのは難しいかなと諦めかけていた時に、端材の提供を快く申し出てくださったのが、栃木県鹿沼市に工場がある栃木ダボ製作所社長の田代さんでした。

栃木ダボさんとの繋がりが生まれたのは、2011年。鹿沼商工会議所のメンバーがパワープレイスに相談に来たのが始まりでした。
鹿沼は日光東照宮の木工細工を職業とする職人たちが住んだ街で、今でも木工の街です。しかし建具や木工細工の売れ行きは低迷していました。地域にはデザインの力が必要だと確信していた親分の考えに賛同した名だたるデザイナーが、地域の木材所と連携して新しいデザインの木工品をつくる「ゼロ円デザイン」をはじめました。このデザインされた木工品は、伝統的なお祭り『鹿沼ぶっつけ祭り』の期間中にオリジナル屋台で販売しました。この「ゼロ円デザイン」の枠組みの中で、パワープレイスとタッグを組んだのが栃木ダボさんでした。そして生まれた日本の神々シリーズ(お面・ピンバッジ)はやがて鹿沼だけでなく、日本全国。ひいては世界からも買い付けられるほど人気の商品にまで成長しました。

栃木ダボさんが端材を提供してくださることで、この潮見学童工作展の活動を持続することができるようになりました。そして段々と子どもたちと木の端材が触れ合うことで多くの学びにつながることもわかるようになってきました。
最初のうちは子どもたちが手を怪我しないように、角にヤスリがけをしていたのですが、「木はナメてかかると怪我をするぞっ」ということを、身をもって体験してもらうために、今は切りっぱなしの状態で提供しています。(やするのが面倒臭いからでありません笑)
栃木の山から都会のこどもたちに、コーティングされていない安全でない本物の木が届き、工作展ははじまります。子どもたちは各々木との向き合い方を考えながら工作を進めていきます。そしてそこに私たちのデザインノウハウを還元することができるのです。このような活動が続けられることに感謝したいです。
子どもたちの毎日の楽しみのために様々なイベントを企画し実行していく『きっずクラブ潮見』と、森と人を繋ぐダボのような存在でありたい『栃木ダボ製作所』がつながり、子供たちのため・未来のためにこれからも活動を続けていく決意を新たにした2025年1月。『ゆめの森展』の設営を手伝いながら、これからもデザインでできる地域貢献の活動を続けていきたいと願うばかりです。

最後に今回のパワープレイス紀行では、この素敵なつながりが続くようにと願いを込めて、きっずクラブ潮見の高橋さん&栃木ダボ製作所の田代さんへのインタビューを交えながら1本の動画にまとめました。ぜひご覧ください。
それではまたパワープレイス紀行Vol.4でお会いしましょう。

木の工作展『ゆめの森』
企画・運営/下妻/倉内/髙山   撮影・動画編集/鈴木   設営手伝い/森   文/倉内

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